比較:発展編
比較級を用いた表現の5回目です。
今回は、
比較級を用いたその他の重要な表現を取り上げます。
① more or less
▶︎more or less の表現は、
よく使われますが、その基本的なニュアンスは1つ。
「あいまいさ」です。
👉なぜそんなニュアンスが出てくるのか?
単語1つ1つの意味を確認すると、わかります。
[1] more:より多くの
[2] or :A or B の形で、「AかB」
[3] less:より少なく
▶︎ここから、more or less は
【「より多く」か「より少なく」か】という意味になります。
ただし、 or は A or Bの形で、
一般的に「相手に対して A か B か、どちらかを選択しなさい」と
相手に「選択を求める」単語なのですが…
▶︎この表現では、相手に「選択」を求めているのではなく、
話者が「自分の頭の中で」
「A なのか B なのか」どちらかな? どちらか選べないな〜
という「迷い」を示しているのです。
この「迷い」が、more or less の基本ニュアンス「あいまいさ」を生み出します。 |
例文で確認しましょう。
ex.1 What you said yesterday was more or less correct.
「あなたが昨日言ったことは多かれ少なかれ正しかった。」
▶︎話者が、「あなたが昨日言ったこと」が、「正しい」ということに対して
「あいまいさ」があったので、correct の前に more or less を置いています。
👉「多かれ少なかれ / ある程度は / いくぶん」
ex.2 This T-shirt will cost 2,000 yen, more or less.
「このTシャツは、だいたい2,000円ぐらいするだろう。」
▶︎話者は、先に値段を「2,000円」だと言い切って、しまった後に、
「それぐらいかな?」という「あいまいさ」を付け加えた表現です。
▶︎この表現は、「数値」, more or less の形で用いられます。
👉「およそ / だいたい」
ex.3 I’ve more or less finished my task.
「私は自分の課題をほぼ終えました。」
▶︎話者が、「課題を終えた」ことに対して、
完全にではなく、だいたいね、という「あいまいさ」を加味した表現です。
👉「ほとんど / ほぼ /〜も同然」
◎参考書では、
more or less には
「多かれ少なかれ」、「およそ」、「ほとんど」の3つの意味がある、などと
解説していますが、
このように、基本ニュアンスは話者の「あいまいさ」です。
ただ、
more or less が「形容詞の前に」置くと – 日本語の表現上では「多かれ少なかれ」
more or less を「数値の後ろ」に追加すると – 日本語の表現上では「およそ」
more or less を「動詞句の前に」置くと – 日本語の表現上では「ほとんど」
となるだけで、
この3つの意味をわざわざ覚える必要はないと思います。
ポイントは
話者の「あいまいさ」なんですよ!
まとめ
🔴 話者の「あいまいさ」を表現する便利な more or less
👉 more or less は、
形容詞、「数値」、動詞句に対しても次のように使えます。
🔶物事の状況や状態に「あいまいさ」がある場合は、
▶︎more or less +形容詞 →日本語だと「多かれ少なかれ」
🔶「数値」に対して「あいまいさ」がある場合は、
▶︎「数値」, more or less →日本語だと「およそ / 約」
🔶動作に対して「あいまいさ」がある場合は、
▶︎ more or less +動詞(句) →日本語だと「ほぼ / 事実上〜」
② sooner or later
▶︎sooner は、soon の比較級で「より早く(まもなく)」
later は、late の比較級で「より遅く」
どちらも「時」に関わる副詞の比較級で、それを or でつなげています。
▶︎この or は、more or less の or と同じで、
相手に「選択」を求めているのではなく、 話者が「自分の頭の中で」 「A なのか B なのか」どちらかな? どちらか選べないな〜 という「迷い」を示しているのです。 |
👉すなわち、
「遅くなるか、早くなるかわからないなあ〜」
でも「いつか」そうなるだろう、という場合に使われる表現になります。
ex.4 Sooner or later you’ll find the answer.
「遅かれ早かれ、あなたは答えを見つけるだろう。」
ex.5 We’ll come the final conclusion sooner or later.
「いずれ私たちは最終結論に到達するだろう。」
▶︎この表現は、
例文でもわかるように、「肯定文」で使われるので、
「今までやっていたことが」→「おそらくもう少しで」達成するだろうけど、
それがいつかははっきりと分からない、というニュアンスで使われます。
まとめ
🔴 「時」の「あいまいさ」を表現する sooner or later「遅かれ早かれ」
※ただし、そこには「まもなく」というポジティブなニュアンスを含む
・will を用いた肯定文とともに使われることが多い。
・「時」を表す副詞なので、基本的には文末、強調したい場合は文頭に置く
③ know better than to 不定詞
▶︎この表現には、「基」となる表現があり、
それが、know better(than that) で
「もっと分別がある」という意味で使われます。
ex. 6 I know better (than that).
「そのくらいのことは知っています。/ そのくらいの分別はあります。」
▶︎もちろん、この意味は、
know better のダイレクトのニュアンス「もっとよく知っている」から
来ています。
▶︎(than that) の that は、
better の 比較対象となっているので( better than that:それより良い)
逆に「分別のないこと」を意味することになります。
→「それをしないくらいの分別はある」
それに、具体的に比較対象を表す than が加わると次のようになります。
ex. 7 I know better than to go out in the hard rain.
「私には激しい雨の中に外出しないくらいの分別はある。」
◎上記の ex.6 での that の部分に
to go out in the hard rain という to 不定詞が来ています。
👉上記で (than that) の that は「分別のないこと」を指していると
説明しましたが、ここでも同じです。
▶︎go out in the hard rain が「分別のないこと」なので、
→「激しい雨の中に外出しないくらいことの分別はある。」
と to 不定詞の部分は、否定的なニュアンスになるので注意しましょう。
※また、この表現の「分別がある」という意味から、
よくshould や ought to を用いて
「相手を諫める」場合に用いられる文型です。
ex. 8 You should know better than to rely on him.
「君は彼を頼ってはいけないぐらいの分別を持つべきだ。」
まとめ
🔴「〜しないくらいの分別はある 」という表現
know better than to 不定詞 〜
▶︎ to 不定詞は、better than の「比較対象」となるため
「〜しないくらいの – 分別はある」と
to 不定詞の部分は否定的なニュアンスになるので注意。
🟥 この表現と should, ought to とのコンビネーションで
「相手を諫める」場合の文型として、よく使われる。
▶︎主語+ [should / ought to] +know better than to 不定詞〜.
④ much less
▶︎これは、文に付け加える表現です。
例文をまず見てみましょう。
ex. 9 Ken can’t even speak Chinese, much less write it.
「ケンは中国語を話すことさえもできないし、ましてや書くことなどできない。」
▶︎最初の否定文に続き、
much less で、さらに「できないこと」を強調しています。
ex.10 Tom couldn’t buy a notebook, much less a pen.
「ケンはノートを買うこともできなかったし、ましてやペンを買うこともできなかった。」
▶︎最初の否定文に続き、
much less で、さらに「買えないもの」を加えて強調しています。
👉much less の much は比較級を強調する言葉、less は「〜でない」ことを示す比較級
※前の文章が、否定文の文であることにより、
much less でさらに「〜でない」ことを加えて、
「さらに〜もできない / まして〜でない」と否定を強調する表現となります。
▶︎much less の後ろには、動詞句、形容詞、名詞のどれもが来れます。
▶︎much less の代わりに、同じ使い方で、still less でも表現することができます。
ex. 9 をstill less で表現すると → Ken can’t even speak Chinese, still less write it.
▶︎much less, still less と同じように、let alone でも表現することができます。
ex.10 を let alone で表現すると → Tom couldn’t buy a notebook, let alone a pen.
まとめ
🔴 否定文の後に、付け加える much less
▶︎much less の後に、さらに「〜でない」ことを加えることにより、
「まして〜でない」と否定を強調する表現になります。
否定文, much less +[ 名詞 / 形容詞 / 動詞(句)]
▶︎ much less の代わりに、still less、let alone も同じように使える
⑤ than を用いない「比較」表現
▶︎than でなく to を用いて「比較級」の表現ができるものがあります。
これらの表現は、ラテン語から来た -or で終わる単語と共に使われます。
ex.11 This smartphone is superior to that one.
「このスマホはあのスマホより優れている。」
ex.12 She is two years junior to me.
「彼女は私より2歳若い。」
▶︎形容詞ではありませんが、
動詞の中でも to を用いて「比較」を表現するものがあります。
ex.13 I prefer summer to winter.
「私は冬よりも夏が好きだ。」
まとめ
🔴 ラテン語由来の形容詞の中には、to を用いて比較級を表現できる
▶︎以下のものがよく使われます。
・be superior to 〜:〜より優れた ・be inferior to 〜:〜より劣った ・be senior to 〜:〜より年上の / 上役の ・be junior to 〜:〜より年下の / より地位の低い |
▶︎動詞の prefer も to を用います。
prefer A to B:BよりもAが好き
これで比較級については終わりです
🔴比較・発展編での「比較級」は「その1」から「その5」まであります。
興味のある方は下記をクリックしてご覧ください。
👉比較級その1
・比較級を用いた否定のニュアンス
・比較の差が大きい、小さいことの表現
・than の後ろの来る比較対象について
👉比較級その2
・the 比較級
[the の働き / 絶対比較級 / all the 比較級 / none the 比較級 / the 比較級 SV, the 比較級 SV.]
👉比較級その3
・less 原級 than
・比較級 and 比較級
・同一人物における more A than B
・数に関わる表現 more than 数 / fewer(less) than 数
👉比較級その4
・no 原級 than
・A is no more B than C is D.
・A is no less B than C is D.
・no less than 数
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