今回は、
小学校外国語活動に関わるYoutubeの2回目です。
文科省が公開している Youtube の一連の動画は、
「小学校が国語活動・外国語ガイドブック」の
「実習編」と連動しており、
1 クラスルーム・イングリッシュ
2 基本英会話
3 Small Talk
4 スピーキング・トレーニング
5 発音トレーニング
という5つの章からなっています。
前回の「1 クラスルーム・イングリッシュ」に続き、
2 基本英会話
「ガイドブック」の「基本英会話」の章は、
さらに、①授業内での会話例 ②打ち合わせ等で用いられる会話例 ③授業や学校に関わる表現例 の3項目に分けて紹介されています。
〇ALTが配属された場合の意思疎通を図るためにも、このような表現に慣れましょう。
①授業内での会話例
ー授業の場面や状況に応じて様々な表現を増やしていき、ALTとともに授業を円滑に進めていくこと。
②打ち合わせ等で用いられる会話例
ーALTとの事前の打ち合わせ、さらに授業後の授業評価を円滑に行いティーム・ティーチングを有意義なものにすること。
③授業や学校に関わる表現例
ー教材や教科目、学校の場所・行事等の英語での表現のリスト
◎この章は、すべてALTとのティーム・ティーチングのための表現となっているので、
今回は、ALTについて考えてみたいと思います。
ALTの活用
現在の学習指導要領の 「第4章 外国語活動」の 「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」において、
(5) 指導計画の作成や活動については、学級担任の教師又は外国語活動の担当する教師が行うこととし、授業の実施に当たっては、ネイティブ・スピーカーの活用に努めるとともに、地域の実態に応じて、外国語に堪能な地域の人々の協力を得るなど、指導体制を充実すること。
と明記されています。
指導者が、「英語の堪能ではない」し、かつ「音声からの活動なので、ネイティブ・スピーカーとのTTが有効」と考えての方針だと思いますが、これがまた教員の負担を重くしています。(※TT:ティーム・ティーチング)
それは、ALTのような外部の人とTTをする場合は、事前の打ち合わせが実は一番重要な部分で、この打ち合わせがしっかり行われるか、どうかで授業が成立するかどうかが決まるようなものです。
しかし、実際に週1回の授業のためのALTとの打ち合わせする時間が取れるのでしょうか。
私がいた地域では、だいだいこのような手順でTTが行われていました。
①授業の1週間前にALTの派遣願いと指導案を教育委員会に提出
(教育委員会の担当者は、その指導案をできるだけ早く担当ALTに配布)
②授業当日
<授業時間前>
ー授業時間の前に1時間打ち合わせが取れる場合:職員室等でALTと打ち合わせ
※研究指定校などでは、確実に打ち合わせが取れるように時間割の調整も実施
ー打ち合わせの時間が取れない場合:教室へALTと移動する時間に簡単な確認
<授業中>
ー事前に提出した指導案に基づいた授業を実施
※ALTとのやりとりも重要だが、電子黒板などの機器の扱いもあり
<授業後>
ー授業後の振り返りの時間は、現実の問題としてあまり行われていない。
ただし、ALTが一日中その学校にいる場合は、昼休み等を利用して実施。
※私がいた地域では、ALTは基本的に中学校に配属され、その中学校の学区の複数の小学校へALTが派遣されてTTを行うという体制であったため、一日中同じ学校にいるということはあまりありませんでした。
しかも、5年生と6年生の2学年に対して同じ日に別々の教師とのALTとのTTを行うとなると、さらに時間的には厳しくなり、まずます授業前・授業後のミィーテイングが実施できなくなり、授業中での対応だけで精一杯という状況でした。
その打ち合わせのために必要な「基本英会話」を
覚えてください、というのは小学校の先生にばかり負担を課しているだけで
おかしいと思うのは私だけなのでしょうか?
中学校や高校でのALTの活用は?
それでは、中学校でのALTの活用はどのようでしょうか?
自分の実体験から話をします。
①ALTは常駐していないので、4月当初に、ALTの派遣希望する日時を
申請します。(私の勤務校は小規模校で、各学期に各学年に1回は授業に
参加していもらうように依頼していました。)
②ALTの割り当てが、5月の初めには決定します。
③ALTが来てもらうのは、たいてい発表活動がメインとなる時間に
ぶつけているので、その時間に向けての準備は十分にできます。
④授業当日は、1時間目には、必ず打ち合わせに時間をとり
入念な打ち合わせをします。(もちろん事前に指導略案は委員会に提出しています。その指導案を見ながら打ち合わせをするわけです。
⑤教科担当制なので、事後のフィードバックをする時間もたいていは1時間
しっかりととれました。
⑥TTが終わった後は、できるだけ早くその評価を委員会へ提出します。
こうやって見てみると、小学校と比べると、
・まず担当教員は、ある程度英語を話せ、打ち合わせもできる。
・事前の打ち合わせの時間、授業後のフィードバックの時間も確保しやすい
という違いが明白です。
これと同じようなことを、
小学校の担当教員に求める、というのはどうなんでしょう?
かなり無理があるのが分かると思います。
しかも、ALTの派遣回数も、
小学校が「音」からの導入を重視するため、できるだけ多くの回数を
要請するように指導されています。
これって、外国語活動担当教員残酷物語ではないですか?
だから、私が以前から話しているように、
このような指導ができる教員をしっかり大学で養成してから、
このような英語教育改革を行うべきだと思うのです。
なぜ、こんなに急いで、
教員に負担を重くしていくのか?
その一方で、
教員の負担、残業時間が多くて問題だと、新聞では話題になっています。
このあたりが、文科省の
英語教育改革の方針に齟齬があるのです。
ちなみ、高校のALT活用についてはよく知らないのですが、
私の高校時代には、3年間に一度もALTは授業に来ませんでした。
また、公開授業などで、
年に1回程高校の英語の授業を参観させてももらうこともありますが、
一度もALTとの授業を見たことはありません。
小・中・高と進めば進むほど、
授業で英語を使わないようになっているという現状が
私が住んでいる地域にはあります。
本当は、これは逆ではないといけないはず。
文科省の方針から行けば、
高校の英語の先生なんて、「全員ネイティブ・スピーカー」であってもいいんじゃないですかね?
ここも文科省が全体像を見た英語教育改革を行っていない証拠だと思います。
多文化理解であれば
多文化理解であれば、
小学校でTTを行うALTであるならば、逆に彼らが日本の英語教育の在り方や指導方法をもっと研修する場面を設けないといけないのではないでしょうか。
もちろん、
ALTの大部分は、日本語能力テストに挑戦し、日本語を習得しようとしているし、
小学校の外国語活動についてもそれぞれ勉強し、努力しています。
いろんな勤務条件・勤務契約の枠の中ではできないのかもしれませんが、
日本の小学校の外国語活動担当教員と一緒に研修を受けるなどの
場面があってもいいのではないでしょうか?そして、グループデスカッションの中で
お互いの本当の思い・考えを述べ合う場面があってもいいのでは?
(少なくとも私の地域ではそのようなことは実施されていませんでした。)
最後の言いたいのは、
文科省は、このような現実をしっかりと把握してるのか?
ということです。
今回はここまで。
「小学校外国語活動に関わるYoutube動画」は「①」から「⑤」まで
あります。下記にリストアップしますので、興味のあるものが
ありましたら、クリックしてお読みください。
①クラスルーム・イングリッシュ
③Small Talk
④スピーキング・トレーニング
⑤発音トレーニング
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