大学入学共通テストで活用される民間試験その4

東大の結論待ちですか?

前回「大学入学共通テスト」の英語で
活用される民間試験に対する東大の対応が混乱している記事を
アップしましたが、その影響が全国の大学に大きく影響を
及ぼしているようです。

引き続きこの件について考えてみます。



「英語の民間試験活用、方針決定遅れる」

8月14日(火)ネットでニュースを読んでいたら、
目に飛び込んできたのが、

英語の民間試験活用、方針決定遅れる
という見出しでした。中身を読んでみると
 2020年度に始まる大学入学共通テストで導入される英語の民間試験の活用方法について、国立大の方針決定が遅れている。朝日新聞が学部入試を行う82大学に確認したところ、10日時点で具体的な方針を示したのは12大学にとどまり、37大学は「活用するかは未定」と答えた。目的が異なる複数の試験を比較することの公平さなどについて疑問が投げかけられ、方針がまとまらない大学が多いようだ。

(引用元:2018年8月13日(月) 朝日新聞デジタル)

〜と書かれてありました。

まあ、東大が混乱するぐらい(?)だから、
他の大学も学内でいろんな意見が出て混迷のさなかにあるのでしょう。

しかし

同記事をさらに読むと次のようにありました。

 共通テストは、現在の高校1年から対象となる。国立大学協会によると、国立大は入試を変更する際、受験生の準備などを考慮して試験実施の2年前の7月に基本方針を示すケースが多い。国大協は全受験生に民間試験を課す方針を決め、ガイドラインを示しているが、半数近くの国立大では、この方針に従うかさえ決まっていない。

ここで、一回「大学入試センター試験」から「大学入学共通テスト」への移行までの流れを確認してみましょう。

   期 間 移行内容
〜2019年度まで(2020年1月) 大学入学センター試験終了
2020年度〜2023年度(2024年1月)まで 大学入学共通テストと民間試験の併用
2024年度〜(2025年1月) 完全に民間試験に移行

今、直面しているのは、
赤字の部分の移行期間での対応の仕方です。
👉「大学入学共通テスト」と書かれていますが、「大学入試センター」が作成する試験なので、おそらく現在実施している「大学入試センター」試験と似たような試験だと思われます。
👉「民間試験との併用」とありますが、現在のところ申請があったうちの「8種類」の試験が条件をクリアしています。

この「民間試験との併用」とは、具体的にはどんなものなのでしょう?

3種類の民間試験との併用の仕方

国立大学協会のガイドラインでは、
併用の仕方としては、3つのパターンを提示しています。

①民間試験を出願資格とする
(例えば、TOEIC◯◯点以上取っていないと受験できないのような方法)
②大学センター作成の試験(大学入学共通テスト)に民間試験の分を加点する
(例えば、TOEFL〇〇点〜△△点だと大学入学共通テストの得点に20点をプラスするのような方法)
③民間試験と大学入学共通テストの両方を組み合わせる
(これは大学からの指示により様々な組み合わせ方が考えられる。)

このガイドラインに合わせて、
朝日新聞が82大学に確認したところ

併用の仕方 採用する大学名・数
①出願資格タイプ 東京外語大学、滋賀大学などの4大学
②加点方式タイプ 愛知教育大学などの6大学
③両方組み合わせタイプ 長崎大学、熊本大学の2大学

となり、そのほかとして

回答の仕方 大学名・数
A:方針は決定、具体的な部分は未定 筑波大学、三重大学などの33大学
B:活用するかどうかも未定 北海道大学、東大などの37大学

という結果を得ました。

すなわち、
82大学中、
約15%の12大学しかまだ「併用の仕方」が決まっていないのです。

朝日新聞の記事にあるように
「国立大は入試を変更する際、受験生の準備などを考慮して試験実施の2年前の7月に基本方針を示すケースが多い」のであれば、

スケジュール通りであれば平成20年度に「民間試験との併用」をしなければならないのは、現在の「高校1年生」であり、さえが実施されるのであれば、今年の7月までに基本方針が明示されなければいけないのに、それさえ行われていないことになります。

この拙速具合はどうなのでしょう。

今回は、
このような大学入試改革を導いてきた「教育再生実行会議」「中央教育審議会」に注目して、考えて行きたいと思います。

教育再生実行会議とは

この大学入試改革は、
以前このブログでも記したように、

平成25年度に策定された
「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」に
基づき、その抜本的な改革が行われています。

では、この「計画」は
どこから出てきたかというと
「教育再生実行会議」の提言として出てきているのです。

そこで、
「教育再生実行会議」とは何かを確認しましょう。

 20013年に設置された第2次安倍内閣の有識者会議で、「21世紀の日本にふさわしい教育体制を構築し、教育の再生を実行に移していくため、内閣の最重要課題の一つとして教育改革を推進する」ことを目的としている。
メンバーは首相、官房長官、文部科学大臣、産官学からの参加者ら計16名(座長は早稲田大学の鎌田薫総長)。
2015年7月8日の第8次提言で予定された課題についての提言を終え、以後は提言内容が実行されるようフォローアップすることとなっている。

ここでは、「第2次安倍内閣の有識者会議」とありますが、
あくまでも「私的諮問機関」であり、「各委員」の「私人」としての意見を
集約する機関のことです。

その有識者には、
・前愛媛県知事 加戸守行
(森友問題で、官邸側を弁護)
・成基コミュニティグループ代表 佐々木喜一
(当時の下村文科大臣に計60万の献金をしていた)
が在籍していて、

まさに官邸側にとって「私的」なメンバー構成になっていたようです。

【構成メンバー:16名】
・安倍首相、菅官房長官、下村文部科学大臣、産学官からの参加者(13名)
※座長:早稲田大学 鎌田薫総長

さて、この「教育再生実行会議」は8回の提言をして、お役目が終了したのですが、下記のような提言をしてきました。

年月日 〜次提言 〜についての提言か
2013.2.26 第1次 「いじめの問題等への対応について」
2013.4.15 第2次 「教育委員会制度等の在り方について」
2013.5.28 第3次 「これからの大学教育等の在り方について」
2013.10.31 第4次 「高等学校教育と大学教育との接続・大学入学者選抜の在り方について」
2014.7.3 第5次 「今後の学制等の在り方について」
2017.3.4 第6次 「学び続ける 社会、全員参加型社会、地方創生を実現する教育の在り方について」
2017.5.14 第7次 「これからの時代に求められる資質・能力と、それを培う教育、教師の在り方について
2017.7.8 第8次 「教育立国実現のための教育投資・教育財源の在り方について」

このうち
・第3次提言には
👉「初等中等教育段階からグローバル化に対応した教育を充実する」
・第4次提言には
👉「外部検定試験の活用を検討する」
という文言があり、ここが

英語教育改革、大学入試改革の発端となったようです。

一方中央教育審議会とは、どのような会なのでしょう?

中央教育審議会とは

ネットで調べると、こんな感じになります。

文部科学大臣の諮問機関として文部科学省内に設置されている審議会。
教育や学術、文化に関わる政策を審議して文部科学省大臣や関係行政機関
の町に意見を述べる。教育制度、生涯学習、初等中等教育、大学、スポーツ・青少年の5つの分科会がある。委員30人以内、任期2年である。

諮問機関も分かりづらいので調べて見ました。

行政機関のうち,行政庁からの諮問に応じて意見を答申する権限をもつもの。国家行政組織法8条,地方自治法 174条の規定に基づいて,審議会,協議会,調査会,専門委員会などの名称がつけられ,行政機関に付属的に設置される。多くは複数の委員から成り,合議制によって運営される。諮問に対する答申は参考意見にとどまり法的拘束力はないが,行政の適切な運営をはかるために,決定機関にさまざまな分野の意見を反映させることを目的として設置されたものであり,重要な役割をもつ。

 引用元:ブリタニカ国際大百科事典

結局、
中央教育審議会(略して中教審とも言う)は、
あくまでも「文部科学省内」に設置された審議会で、
文部科学省大臣が、必要に応じて「意見」を求める合議制の機関。

文部科学省大臣の下に設置された諮問機関

となるようです。

しかし、
「教育再生実行会議」も教育に関して提言していましたが、
「中央教育審議会」とはどこが違うのでしょうか?

教育再生実行会議と中央教育審議会との違い

【教育再生実行会議は】
・安倍首相直下の有識者会議
〜広い知見から教育に関する事項を扱う
→(政権に寄り添った)より大胆な政策提言ができる

【中央教育審議会は】
・文部科学省大臣の諮問機関
〜教育の専門的な事項についてより具体的な事項を取り扱う

となるようですが、

平成27年5月26日(火)に行われた
中央教育審議会と教育再生実行会議との意見交換会 の議事録では

中央教育審議会の篠原委員がこのようなことを述べています。

私も、福田・麻生内閣のときに教育再生懇談会という組織の委員を務めた経験がございます。その経験からいって、今の実行会議と中教審の関係というのは極めてスムーズに連携する流れができていると私は思っています。これは下村大臣が両方をグリップしているということが一番大きいと思うのですが、ゴルフをやらない人がいたら大変恐縮なのですが、ゴルフで言えば、実行会議にはティーショットを打っていただいて、我々はアプローチとパットできちんとまとめていく。OBだけは是非打たないでほしいと思っていますが、時々セミラフぐらいかなと思うときもありますが、OBにはなっていないのでリカバーができるとういう状況だと思うのです。だから、この連携というのは非常に大事だと思うので、その上に立って2点。

すなわちこの篠原委員は、

教育再生実行会議:ティーショット
中央教育審議会:アプローチとパットでまとめる
〜下村大臣が両方に関わっているので連携がスムーズ

と述べているのです。

結局、

教育再生実行会議が、改革の方向性を打ち出し
中央教育審議会が、それを実行に移す下請け機関に過ぎず、
間に下村大臣がいるからスムーズに改革ができるのだ

と明言しているのです。

この形で、本当にいいのですか?
と私は思います。

教育改革が拙速になる理由

本当は、
両会議に「下村大臣」がいるのは好ましいことではないのでは?
と私は思います。

教育再生実行会議は、
あくまでも「広い知見」で全体を見渡した提言をする。

中央教育審議会は、
その提言を受けて、それが実現できるのか、どうかを
再確認し、必要であれば微調整したり、実現不可能であれば、
提言を否定するのも役割なのではないかと思うのです。

つまり、
①安倍首相の直下で
彼の意向を受けた「教育再生審議会」の提言を、

②独立した文部科学省大臣が「中央教育審議会」に、
「この提言は、現実の問題として、どうなのかを検討してもらいたい」と諮問し、

③「中央教育審議会」は調査、検討し、合議制でまとめた意見を
「文部科学省大臣」に答申する

〜という流れになるのではないかと思うのです。

ところが
両方の会議に「下村大臣」がいるために
「中央教育審議会」のチェック機能がなくなってしまい、
ただの下請け機関と化してしまったのです。

これが、
現政権が行ってきた教育改革につきまとう「拙速感」の原因で、
それにより、現場はいつも混乱に陥っているのです。

官邸主導のスピード感を持った政治?

官僚主導の時間のかかる「政治」から、
スピード感を持った「官邸主導」の政治を行ってきた弊害が

今回取り上げた「大学入学共通テスト」にも出てきているのです。

このような弊害は他にも出てきます。
・特定秘密保護法(反対82%)
・安全保障関連法(反対70%)
・TPP関連法(反対68%)
・共謀罪法(審議不十分60%)
・働き方改革法(今国会不要69%)
・カジノ法案(反対65%)

どれも
法案をチェックする機能が弱まってしまったか、なくなってしまったが
ために、こんなに反対される法案を現政権は平気で通過させてしまったのです。

スピード感を求めたことから、
安倍首相一強の、忖度につながり
チェック機能を骨抜きにした
のが現在の状態なのです。

そして、
それを良しとしている自民党もどうなのでしょう。

そして、
このような現政権の意向に振り回されている
大学、そして入試を受ける生徒たちも
多大なる被害を被ることになるのです。

まさに
under control ではなく
no control です。

今回はここまで。

「大学入学共通テストで活用される民間試験」
には「その5」もあります。
引き続き読みたい方は、下記をクリックしてください。

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