研修ガイドブックについて~基本編②その目標1

さて、今回は、
「小学校外国語教育の目標」の部分に入ります。

小学校外国語教育の目標

この章では、まず最初に
「小学校への外国語教育導入の経過」について述べられているのですが、
それに個人的な意見を加え、簡単に説明します。

①外国語教育導入の経過

このガイドブックでは、4つのステージに分けて説明しています。
・第1ステージ:1992 ~ 2001
→大阪市の公立小中学校が研究開発学校の指定を受け、「英語教育の研究」
が始まり、1996年には各都道府県1校単位に指定校が拡大。
※この頃は、一般的に教員の同士でもそれほど話題になっていなかったと
思います。もちろん「指定校」の先生方はご苦労なさったと思いますが。

・第2ステージ:2002 ~ 2010
→「総合的な学習の時間」の中での英語教育の時代
※この表現は間違っていると思います。最初は「総合的な学習の時間」の
内容に困ってしまった現場は、「多文化理解」の名の下にALTを活用し、
英語でのゲームなどを楽しむようなところから始まったはずです。しかも、
最初は、「英語でのゲームや活動」は「総合的な学習の時間」の趣旨に
ふさわしくない、と文科省は判断していたはずです。それが、世間的な「英語教育」の早期開始の流れにのり、なし崩し的に「いわゆる先進校」と言われる小学校が、勝手に「外国語活動」的内容を導入し、保護者の多大な賛同を受けた、というのが現実に近いはずです。
・・・そのため、小学校間での児童の英語教育における格差が大きくなって
しまったので、必修化へと文科省は舵を切らなくていけなくなったのです。
まるで、最初から「総合的な学習の時間」が「外国語活動」への導入であったかのような表記は、安倍首相の言う「印象操作」をしようとしたふしが見られます。
(第1ステージの研究指定校の研究成果は、第2ステージの「総合的な学習の時間」の中での英語教育の時代に生かされたのだろうか?疑問である。)

・第3ステージ:2011 ~ 2019
→英語教育必修化の時代
※教育の機会均等当の確保や中学校との円滑な接続等の観点から課題があり」国として、必修化にすることなった、と書かれていますが、上記でも書いたように、「機会不均等」「中学校との接続を考えない指導内容」を生み出したのは、自分たち文科省であると、どこにも書かれていません。
結局文科省は、「英語教育」に関しては改革しなくてないけない、という気持ちは持ちながら、何もできずにいて、その時にたまたま「総合的な学習の時間」で「英語での活動」が世間から注目を浴びたことをいいことに、
流れで、「外国語活動」を必修化したという経過なのです。

2013年には文科省の進める形に合わせるかのように
「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」「英語教育の在り方に関する有識者会議提言」が公表されていますが、これもどうも後付けの「計画」「提言」にしか見えないのは、気のせいでしょうか。

今日は、2017年の9月23日(土)。
そうすると、実際必修化してから、わずから6年半しかたっていません。
ガイドブックでは、いかにも長い時間をかけ、当初の「目標」に向かって
英語教育を進めてきたのだ、という「恰好」を見せていますが、学校現場から見ても「拙速な」改革であると言わざるを得ないでしょう。

・第4ステージ:2020 ~
→英語教育教科化
※以前もお話しましたが、どうも現政権は、とにかく東京オリンピックの開催を理由に無理やり法案や計画を進める傾向があるのですが、これもなぜか
2020年。必修化してから、9年後に教科化。その変化についていくだけで疲弊する教師たち。言語教育をこんなに乱雑に、適当に、拙速に展開している国は他にあるのでしょうか。

②外国語活動の目標

次には、「小学校外国語教育の目標」が記されています。

まずは(1)外国語活動(小学校中学年)についてですが、
「目標」においては、
外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」という言葉が
キーワードになっていて、結局
「外国語」の「聞く・話す」活動によって、
「コミュニケーションを図る素地」となる資質・能力を育成すると記されて
います。

この「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」とは何か?
と当然思うわけで、冊子を見ると、

「外国語で表現し伝え合うため、外国語やその背景にある文化を社会や世界、他者との関わりに着目して捉え、コミュニケーションを行う目的・場面・状況に応じて、情報を整理しながら考えなどを形成し、再構築すること」と定義しているのだそうだ。

前回のブログの記事(研修ガイドブックについて~基本編①その基本理念)
で、小学校中学年の国語の目標は、

「・ 相手や目的に応じ,調べたことなどについて」
→ 筋道を立てて話す能力, 話の中心に気を付けて聞く能力,進行に沿って話し合う能力を身に付けさせたり、
「・ 相手や目的に応じ,調べたことなどが伝わるように」
→ 段落相互の関係な どに注意して文章を書く能力を身に付けさせたり、
することを

であることを明記しましたが、
これと、「外国語活動」の「目標」の「見方・考え方」の定義が相いれないものであることはすぐわかると思います。

中学年では、第3者に対して、日本語を正しく、正確に使い、伝えることを
目標としているの、「外国語活動」では「情報を整理しながら考えなどを形成し、再構成」することをポイントに置いているのはおかしいと思いませんか。

最終的には、高学年で、「そのような見方・考え方」ができればよいのだと
お役人は言うのでしょうが、「外国語活動」の中の「目標」に明記されているのは、子供の発達段階とミスマッチであるし、「国語」の指導要領とも齟齬しています。

どうも「外国語活動・外国語科」を推進しようとする人たちは、
「英語」という語学が、単体で学習されるものだと思っているようです。

「日本語」という語学をしっかり学び、それからの「他言語」の学習が
自分たちの母語に対する畏敬の念をしっかりともち、日本の文化が根付いていくのではないでしょうかね。

昨日のニュースでも話題になっていましたが、

新聞や教科書などを読み取る基礎的な読解力を身に付けられないまま中学を卒業する生徒が25%にのぼることが、国立情報学研究所(東京都)・新井紀子教授らの研究チームの初調査で明らかになった。
社会生活を送るのに最低限必要な読解力の不足が懸念される状況だ。
調査は2016年4月~17年7月、全国の小6~社会人を対象に、独自の読解力テストを実施。公立・私立中高生2万1000人の結果を中心に分析した。
主語や目的語など文章の構造が理解できているかを問うタイプの設問群で、中学1年の正答率は62%、中学2年が65%、中学3年が75%となった。中学3年の4人に1人(25%)が、教科書レベルの基礎的な読解力を身に付けないまま義務教育を終えていることになる。
引用元:読売新聞 2017/9/23

中学生の25%が「日本語」の教科書レベルの基礎的な読解力を身に付けて
いないのに、どうして「外国語活動」もしっかり取り組むことができるのでしょうか。

さらにガイドブックでは、
「外国語活動」の目標を達成するために、3本の柱があり
1つ目の柱:「知識及び技能」に関するもの
→キーワード「体験的に理解」「音声の違い等に気付く」「慣れ親しむ」
2つ目の柱:「思考力、判断力、表現力等」に関するもの
→キーワード「自分の考えや気持ちなどを伝え合う」(力の素地)
3つ目の柱:「学びに向かう力、人間性等」に関するもの
→キーワード「相手に配慮しながら」「主体的に」

これらの3本を一体的に育成することにより、
コミュニケーションを図る素地となる資質・能力が育成されるのである、
だそうです。

・「目標」にある発達段階とのミスマッチ、そして「国語」との
接続を無視したような内容、そして日本の中学生の「日本語」の理解度の
低さから言っても、この目標は形だけのもので終わること間違いなしである。

この後、
「外国語科」の目標、と「英語」の目標、という段落があるのですが、
長くなってしまったので、今回はここまで。

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