助動詞の3つ目は、must を取り上げます。
must は、
中学校の教科書では、2年生時に
「〜しなければなりません」と表現する時の助動詞として登場します。
この must を詳しくしてみましょう。
must がもつ基本的なニュアンス
例えば、こんな風に
教科書では must は登場してきたはずです。
Ken must go shopping.
「ケンは買い物しに行かなければなりません。」
We have to do our homework now.
「私たちは今宿題をしなければなりません。」
このように、
▶︎must は have(has) to は(ほぼ)同じ意味で
「〜しなければなりません」という意味です、と
簡単に説明されていたと思います。
しかし、
これだけでは 助動詞 must のことを理解することは
できません。
そこで、can, will と同じように
must にも「土台となるニュアンス」があるので、
それを最初に確認していきたいと思います。
must が有する「圧力を加える」というニュアンス
・助動詞 must には
「圧力を加える」という基本的なニュアンスがあり、
そこから、様々な must の使い方が出てくるのです。
must の基本ニュアンス「圧力を加える」 |
⬇️
①義務 | ②禁止 | ③強い確信 | ※④強いお勧め |
▶︎人に対して「〜しなければならない」と圧力を加える | ▶︎否定形で「〜してはいけない」と圧力を加える | ▶︎相手に対して「〜に違いない」と強い確信で圧力を加える | ▶︎ You must の形で「ぜひ〜してね」と強いお勧めで圧力を加える |
※④は中学校の教科書では扱われていませんが、説明をしていきます。
◎このそれぞれについて
詳しく例文を挙げて解説していきます。
must の基本的な4つの使い方
①義務(〜しなければならない)
・一番最初は、義務を表す must の使い方です。
この使い方は、一番 must の基本ニュアンスがわかりやすく
※「〜しなければならない」という意味で
主語の行動に対して「強い圧力」を与え、義務を表現することが
できます。
👉ここから、you が主語である時は、「相手に対して強い圧力をかける」
ことになるので、ほぼ「命令文」と同じニュアンスにもなります。
例文を挙げます。
ex.1 Bob must finish reading this book by tomorrow.
「ボブは明日までにこの本を読み終えなければならない。」
▶︎「ボブ」が「明日までこの本を読む」という行為に対して強い圧力
ex.2 You must go to bed now.
「あなたは今寝なければならない。」
▶︎相手に対して「今寝る」という行為に対して強い圧力
👉主語が You なので、命令文にして Go to bed now. とも言えます
②禁止(否定文:〜してはいけません)
・must は「圧力を加える」というニュアンスがあるので、
それを否定形にすると
▶︎当然「〜してはいけません」と高圧的な禁止を意味する表現になります。
👉 ここから、①義務でも示したように、
主語が You の場合は、ほぼ「禁止の命令文」と同じニュアンスになります。
例文を挙げます。
ex.4 We must not[ mustn’t ] swim in this river.
「この川で泳いではいけません。」
▶︎「私たち」が「この川で泳ぐこと」を高圧的に禁止
※must not の短縮形 mustn’t に注意。
ex.5 You must not [ mustn’t ] touch this pot.
「このツボを触ってはいけません。」
▶︎相手に対して「このツボを触ること」を高圧的に禁止
👉主語が You なので、禁止の命令文にして、Don’t touch this pot. とも言えます
③強い確信(〜に違いない)
・must は「その状況」が「その通りである」と
強い圧力をかけ、確信を表現する場合もあります。
👉「確信」を表現するのに「形容詞」が使われることが多いので、
be 動詞とともに使われる (must be) ことが多いようです。
今回は先に、例文を挙げます。
ex.6 This present must be expensive.
「このプレゼントは高価に違いない。」
▶︎「このプレゼントが高価」であることに強い確信
ex.7 This story must be true.
「この物語は真実に違いない。」
▶︎「この物語が真実」であることに強い確信
※④強いお勧め(ぜひ〜してね)
・場合によって must は、
▶︎その「強い圧力」が「おすすめ」することにかかってくることがあります。
※この表現は親しい人に対して使われるようです。(Forest から)
例文を挙げます。
ex.8 You must go and see Hirosaki Cherry Blossom Festival when you come to Aomori.
「青森に来たら、ぜひ弘前さくら祭りを見に行ってくださいね。」
▶︎「弘前さくら祭りを見に行くこと」を相手に強く勧めている
ex.9 You must come and visit me.
「ぜひ私のところに遊びに来てくださいね。」
▶︎『「自分」の家を訪れること』を相手に強く勧めている
must と have to
・中学校では、
must =have to と学び、
どちらも「〜しなければならない」と「日本語」は同じですが
▶︎ニュアンスは違います。
※基本的に表現する「形」が違うということは、そこに何らかの
ニュアンスの違いは生じているのです。だから、「別な表現」をしているのですから。ー違いは下記の通りです。
◎must の「〜しなければならない」 =「話し手の考え」から生じる「強い圧力」(内発的要因) ◎have to の「〜しなければならない」 =「外的な理由や状況」が原因による「強い圧力」(外発的要因) ▶︎「(〜だから)・・・せざるを得ない」のようなニュアンスになります。 |
👉 must は、「自分で考え、〜しなければならない」
have to は、「いろんな状況や理由によって、〜せざるを得ない」のような違いに
なるわけです。
・I must get up early every day.
「私は毎日早く起きなければならない。」
▶︎「自分」で考えて「早く起床すること」に対して強い圧力をかける
・You have to get up early because of tomorrow’s meeting.
「あなたは明日の会議のため早く起きなければならない。」
▶︎「明日の会議」という「外的な理由」により 「早く起床すること」に対して強い圧力をかける
※このような違いもできれば、押さえるようにしておきましょう。
have to の使い方
have to のニュアンスについては、上記の部分をしっかり押さえて、
その他に気をつけて欲しい部分を列記していきます。
[1] have to は、3単現の時は、has to +動詞の原形となる。
a. You have to study English hard.
▶︎ You を She に変えると
b. She has to study English hard. となります。
[2] a. b. を否定文、疑問文にすると do / does が出てきます。
a. の否定文:You don’t have to study English hard.
a. の疑問文:Do you have to study English hard?
▶︎ Yes, I do. / No, I don’t.
b. の否定文:She doesn’t have to study English hard.
b. の疑問文:Does she have to study English hard?
▶︎ Yes, she does. / No, she doesn’t.
[3] have to の否定文の意味に注意!
・must の否定文( must not ) は、「〜してはいけません」と言う「禁止」を
意味します。
▶︎一方、have to は「外的な要因」による「してはいけません」なので、それを否定文にすると「外的な要因」がなくなり、「〜する必要がない」という意味になるので注意。
・must not (mustn’t):〜してはいけません ・don’t / doesn’t have to:〜する必要はない |
👉ここから、a. b. の否定文の意味は下記のようになります。
a. の否定文
You don’t have to study English very hard.
「あなたは一生懸命に英語を勉強する必要はありません。」
b. の否定文
She doesn’t have to study English very hard.
「彼女は一生懸命に英語を勉強する必要はありません。」
[4] have to も「〜に違いない」(強い確信)を意味する
・must にも「強い確信」を意味する「〜に違いない」という意味がありますが、
have to にも同じ意味があります。
・He has to be the kindest in my class.
「彼は私のクラスで一番やさしいに違いない。」
・She has to be a dancer.
「彼女はダンサーに違いない。」
※細かい部分の話をすると、
どちらの英文とも、「彼、彼女の様子(外的な状況)」を見て、判断したという
ニュアンスがあります。
[5] have to の未来の表現
・助動詞はそのままの形で「2つ並ぶ」ことはありません。
ただ、have to は「助動詞 must」と同じような働きをしますが、
助動詞ではありません。
▶︎ここから、have to の未来の表現は、will have to +動詞の原形 となります。
・I will have to see a doctor tomorrow.
「私は明日医師に診てもらわなければならないだろう。」
[6] have to の過去の表現
・have to の過去の表現は、
次で詳しく解説しますが、have を過去形にして
had to +動詞の原形 で「〜しなければならなかった。」となります。
・They had to cancel their trip.
「彼らは旅行をキャンセルしなければならなかった。」
▶︎否定文
・They didn’t have to cancel their trip.
「彼らは旅行をキャンセルする必要はなかった。」
※意味に注意! have to の否定文は「〜する必要ない」です。
▶︎疑問文
・Did they have to cancel their trip? ーYes, they did. / No, they didn’t.
「彼らは旅行をキャンセルしなければならなかったのですか。」
must には過去形がない!
・can の過去形 は could です。
・will の過去形 は would です。
その他に、中学校では出てきませんが、may の過去形もあります。
※should は shall の過去形です。
👉ところが、
must には、その過去形がありません。
なぜなのでしょう?
それは、やはり must の持つ特徴からくるものです。
「①義務」の部分で述べた
ーYou must の文は、「命令文」とほぼ同じ意味になるーとありますが、
そこからもわかります。
▶︎「命令文」とは、「今、その場で相手に命令する(圧力をかける)」文のことで、
そのため、動詞も「現在」や「過去」を示す形ではなく「原形」が用いられています。この命令文の「今、その場での圧力」が must と共通するので、言い換えることができるのです。
▶︎すなわち、must には「今、この場での強い圧力」という特徴があるため、
「過去形」を持つことができなかったのです。
must には「今、この場での圧力」のニュアンスがある |
👉そのため、
「〜しなければならなかった」と表現したい場合は、
have to を過去にして、 had to +動詞の原形 で表現することになるのです。
・Ken had to call their mother every night.
「ケンは毎晩母に電話しなければならなかった。」
これで、助動詞 must については終了です。
その他の助動詞 についても確認したい方は下記をクリックしてお読みください。
👉助動詞 can
👉助動詞 will
👉助動詞 may
なお助動詞の基本的な役割、使い方を確認したい方は
下記をクリックしてお読みください。
コメント