中学校英語教師の実力②

現在の英語教員の実力は、どのくらいのものか

文科省が、いわゆる文法訳読式の英語から
コミュニケーション能力の育成へと舵を大きく切り出したのは、
平成15年3月31日付けで公表された
~「英語を使える日本人」の育成のための行動計画~
からスタートしています。

これと連動して
・学習指導要領の内容の切り替え
・平成15年から5年間かけての中学校英語教員に
対する悉皆の英語研修
・super English language high school 事業
が動き始め、

「求める英語教員」の力として

<目標>
〇概ねすべての英語教員が、英検準一級、TOEFL550、
TOEIC730点程度の英語力を保持し、および教授力を備える
〇地域レベルで中核リーダー的教員を中心に英語教育力の
工場を図る
〇英語の授業で週1回以上のNative Speaker が参加
〇地域でも英語の堪能な人材の活用
を挙げています。
引用元:「英語を使える日本人」育成のための行動計画

今から10年以上前の話ですが、
この目標は明らかに形骸化、もっと極端に言うと破綻
しています。

<目標>が設定時点ですでに形骸化

それは、
(1)行動計画としながらも、具体的な現場での施策がない
(→県教委まかせ)。また各地教委による研修や講座、または講師の派遣要請等を考えると
必要経費はかなりあると思われるが、それは簡単に捻出できるようなものではないと思われる。
(2)教え方、英語力の前に、しっかりした「英語教育」の土台・理念を
共通理解しなければいけないのに、そのような場面がない。
(3)英検、TOEFL、TOEIC の成績は、決して英語教員の英語指導力とイコールにはならない。
(4)英語力の前に、語学に対する「指導法」に関する研修などが重要なのでは?

という疑問が湧き出てくる部分からして、
すでに異常だと思います。

教育はトップダウンですぐには変われない

生命の危険があったり、
各地方公共団体が留意したり、伝達するだけで
すむような事項であれば、トップダウンでも
その効果は現れるでしょう。

でも教育は、「トップダウン」だけでは
そんな簡単には変われません。

政権が自由にそして変革がすぐに
行われるようにするためには、ある程度の
「トップダウン」は必要だと思います。

しかし現政権は、日本国を「会社」とみなしているかのように
次々とかなり強引に法案を成立させ、困るとすぐに
閣議決定だと言います。

この姿勢は、もう一度いいますが、
教育現場には相いれないものです。

なぜなら、教育は人を育てるものであって、
教育する人も「以前の教育を受けた」人だからです

文科省は、「会社組織化」している自覚がない

文科省は、数値的な目標を提示し、
その下部組織である、教育委員会がその目標のもとに
何とかして<しなければおかしい>、それが現場の学校に
生かされていくという幻想を
いまだに持っているようです。

基本的に、今の文科省は、
利益ばかりを追求する「会社組織化」してしまっていて、
そのような体制が元来「教育」とはそぐわないという
ことに気づいていません。
もしくは、気づいていても経済界のお偉方に忖度して
知らないふりをしているかのように見えます。

一番欠けているのは現状把握

行動計画を作成する時点で、
「今のほとんどの教員は、従来の文科省の指導の下での
訳読方式しか経験していないのだ」という認識が
欠けているのです。

そのような状態の土台にいきなり「英語を使える日本人の育成」
という目標をもってきても、現場が混乱するのは見えている
はず。

私も地方国立大学の中学校英語科教員を養成するための学科で
4年間授業を受けましたが、ほぼ訳読方式、文法中心の勉強で、
教科指導法は、ほとんどテキストを追うだけで。あとは教育実習
まかせ。その状態で、某市内のあまり落ち着いていない公立中学校
にいきなり赴任し、1クラス30名以上の生徒に指導するのは、
はっきり言って、びびりました。

このような教師がすべてとは言いませんが、
かなり多いのは間違いないと思います。

このような現実を踏まえた上での、
「トップダウン」の行動計画ではなく、
「ボトムアップ」の計画でないと意味がないのです。

文科省作成による砂の城

文科省は、知らず知らずに
砂の城を作ろうとしていて、でもその城は、
波や風で、崩されいつまでたっても
完成しないようです。

それでも英語教員は、
文科省や教育委員会が求める授業ができないと
しっかり自覚しているところから、
「6割が自信がない」という結果に導かれるのです。

これを一概に、
「やはり、英語教員は勉強不足だ」と
こきおろすのは簡単です。

文科省は、そのような結果を評論家的な態度で
非難するのではなく、
「だから、どのような道筋を考えなければ
いけないのか」を示さなくてはいけない責任が
あるのです。

今回はここまで。

 

「中学校英語教師の実力」は「①」から「⑤」まであります。
お時間がある方は、どうぞ下記をクリックして「③」もお読みください。

 

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