これは、一体どうしたことでしょう?
東大の混乱ぶりがよくわかる話です。
話題は、そうあの「大学入学共通テスト」の英語で
導入される「民間試験」についての対応です。
彷徨う東大
以前、4月21日にアップした
「大学入学共通テストで活用される民間試験」に関して
また続報がありましたので、
今回をそれを取りあげます。
まずは、今までの経緯を確認しましょう。
今までの経緯
①まずは、2018年3月27日(火)の新聞から
・朝日新聞に掲載された
「現行英検 落選ショック」という記事を話題として、
・大学入学共通テストで民間試験を活用する理由
・「民間試験」活用への批判
・大学入試改革の拙速さ
・「英語を使える日本人」の育成ができるのか
~などについての自分なりの考察していきました。
その中で、
『2018年3月10日に、東大の福田副学長が、「現時点で(民間試験を)入試に用いるのは拙速だ」』と述べたことを示して、「民間試験」活用に対して反対の意見を述べていきました。
②そして、同年4月27日(金)の新聞からです。
・日本経済新聞に
「東大、英語民間試験一転活用へ 大学新共通テストで」という記事が
掲載されました。
東京大学は27日、2020年度に始まる大学入学共通テストで導入する英語の民間試験について、合否判定に使う方向で検討を始めたと公表した。3月に「判定に用いない」との考えを示していたが、方針を事実上転換した。東大が活用する方針を固めたことで、他の国立大での導入の動きが広がりそうだ。
ー27日にホームページで、入試担当の福田裕穂副学長の名前で文書を公表した。具体的な活用の方法は学内のワーキンググループで検討し、夏までに結論を出す。
ー文書では、「読む、書く、聞く、話す」の英語4技能を測る民間試験の意義を認めつつ、「公正公平の観点から検証が必要」と指摘。一方、3月に国立大学協会が「民間試験の結果を2次試験の出願条件とするか、加点するか、両方を組み合わせるか」とするガイドラインを定めたことに触れ、「東大はガイドラインに沿って、英語4技能評価が実効あるものとなるように努める」とした。
(引用元:2018年4月27日付け 日本経済新聞 インターネット版)
この記事には、さらに、
『福田副学長は3月10日の会見で、「民間試験は合否判定に使わない」などと発言していた。東大は「(発言は)個人としての考えで、使わないと正式に決めて公表したものではない」(入試課)としている。』とある。
③そして、同年7月19日(木)の記事から。
・日本経済新聞に
「東大、民間英語試験活用の是非、9月にも基本方針」という記事が掲載されることになります。
東大は19日、2020年度からの「大学入学共通テスト」の英語で導入される民間検定試験の成績を入試で用いるかについて、学内のワーキンググループ(WG)が答申した「活用しない案を第一の選択肢とする」との内容を踏まえ、検討を進める考えを明らかにした。ただ、答申には活用する案も併記されており、東大は両方の選択肢があり得るとしている。
(引用元:2018年7月19日付け 日本経済新聞 インターネット版)
→結局、「民間英語試験を活用する」という4月の見解を、白紙撤回して、
「活用しない案」を第一案として、もう一度検討し合う、のです。
まとめると以下のようなります。
日にち | 発言者・公表された場 | 内容(民間試験について) |
2018.3.18 | 東大・福田副学長(会見で) | 民間試験活用について反対 |
2018.4.27 | 東大・HP(福田副学長名で) | 民間試験活用する方向へ |
2018.7.14 | 東大・HP (「入学者選抜方法検討WG答申の公表について」) |
前言白紙撤回 「活用しない」を第一案として検討 |
これを見ると、
やはり、誰もが思うはず、
「どうして、こんなに東大が右往左往するのか?」と・・・・
そこで、
「民間英語試験」に至るきっかけ、
そしてその長所、短所について確認してみましょう。
なぜ「民間英語試験」を活用するのか?
これは、その土台となる計画があります。
それが、平成25年に策定された
「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」です。
「グローバル化」に対応した教育を進めるために、という名目のもとで
小・中・高等学校を通じた英語教育全体の抜本的な改革を行う、というものです。
小・中・高での様々な「英語教育改革」を受けて
4技能の力も高まっているのだから、
→それに合わせて、大学入試も変革しなければいけない。
→しかし、全国で統一したスピーキング等の面接を伴う試験を実施するのは、施設・人材・それに伴う費用等を考慮すると現実的には無理。
→であれば、従来からある「民間試験」を活用すれば、問題は解決する。
→ある一定のレベルは担保しなければいけないから、「民間試験」を審査する。
→受験生は、いくつかある「民間試験」を自分で選択して、受験させよう。
というような形で、
「民間試験」の活用へと進まざるをえなかったのでしょう。
「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を策定した理由としては 次の3つが考えられます。 ①保護者の小学校での英語教育に対する過剰な期待 ②大企業による即戦力となる「英語を使える」人材への強い要望 ③グローバル化対応 |
「民間英語試験」活用についての長所
それでは、この「民間英語試験」活用することによる長所はどんなものがあるのでしょうか?列記してみます。
・従来ある試験の活用により国の負担が軽減される |
この一つだけです。
これは、どこにとっての長所かというと
「政権」側にとっての長所であって、その他の部分には利点とはならないと
思います。
あっと、忘れていました。利点は1つあります。
・民間英語試験を実施する企業にとっては大きな利益になる |
結局、
この「英語教育改革」も安倍政権の特徴である
「経済界」を向いての、政権側にとってどれだけ都合のいいものであるか、だけを
考えている政策なんですね。
「民間英語試験」活用についての短所
それ以外は、全て短所となるので、これは「受験者」または「受験者の保護者」にとっての短所となります。列記してみましょう。
・受験料の負担
・受験地までの交通費、場合によっては宿泊費の負担
・試験そのものが「大学入学共通テスト」を想定して内容ではない
・異なる試験の結果を同列の「合否判定」に使うことの不均衡
・民間英語試験は、学習指導要領の内容に配慮していない(はず)
(今後していくかもしれせんが・・・)
こうなると、
受験生は、高校での授業と並行して「民間英語試験」のための勉強もしなくてはいけません。それは上記にあるように、その試験は「学習指導要領」に沿ったものではないですし、「入試」とは別の受験テクニック的なものが必要とされるからです。
ひょっとすると、
高校の授業として、または授業の一部として「民間英語試験」対策が行われるでしょうね。そうするとまた「民間英語試験」を実施する企業が利益を得ることになるでしょう(問題集や参考書が売れるでしょうね)。
なぜ、東大が?・・・個人的な予測
では、その中で、どうしてこんなに東大が
「民間英語試験」活用に対する態度が右往左往するのか?
ここからは、
完全に私の個人的な予測で書きますので、ご了承ください。
①福田副学長が「民間英語試験活用」に反対する
【予測】 ・福田副学長は「基礎生物学」を専門としている理科系の先生のようです。 そこからするとあまり「文科省」の「英語教育改革」に対する知見がなく、 「民間英語試験」活用に対するいわゆる「一般的な」意見を個人として 発言したのではないか? |
②HPで、「民間英語試験」活用する方向を示す
【予測】 ・文科省が東大の副学長の記者会見を見て、びっくり。もう「民間英語試験」 活用の方向で進んでいるのに、東大がそれに「反対」することを正式に表明 されると、他の大学もそれに倣う可能性も高い。そこで、東大の副学長に 文科省が接触を持ち、「民間英語試験」活用することの有意性を説得しに、 行ったのではないか?東大もさすがに、その文科省の方向性に逆らえず (研究費等は文科省が握っているので)、前言を翻し、「活用する」とHPで 示したのではないか。 |
③3ヶ月後、HPで「入学者選抜方法検討WGの答申」という形で、
またまた前言白紙撤回。第一案として、「活用しない」方向で。
【予測】 ・ところが、現場の教員や入試担当教員からすると、やはり「民間英語試験」 活用は問題があるという意見が続出してしまって、収拾がつかなくなって しまった。そこでWGの答申という形で、しっかりと検討する期間を設けて 仕切り直しをすることにした。 |
このような経緯で、
結局東大は文科省の意向に振り回されてしまったのではないか、と思います。
逆に言えば、それだけ問題のある「民間英語試験」活用。
しかし、補助金、研究費等は文科省に握られているので、そう簡単に
反対することもできない。
そんなもどかしさが、
影響力が一番大きい東大に現れているのだと思います。
他の大学は一体どのように考えているのでしょうか?
まるで、
教育が政権に支配されてしまっているようです。
今回はここまで。
「大学入学共通テストで活用される民間試験」
には「その4」もあります。
引き続き読みたい方は、下記をクリックしてください。
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