授業時間確保するために〜教科書を無事に終えたい

先日、
検索ワードを確認したら、
「授業時間確保方法」というワードがありました。

中学校の英語教師であった頃、
私も、授業時数が足りず(というか、指導法に迷いがあったため?)、
いつも3学期は大変なことになっていました。

そこで、
自分の経験や同僚の指導法で、参考になるような方法を紹介していきたいと思います。

授業時数の確保とは?

自分の経験も含めるので、今回は「中学校英語」に限定してお話していきます。

現在の中学校での英語における授業時数は
1学年・・・140時間(週4時間✖35週)
2学年・・・140時間(週4時間✖35週)
3学年・・・140時間(週4時間✖35週)
となっています。

基本的に各公立中学校では、この時間数を確保できるように
教務主任を中心として調整しているはずです。

さて、一方教科書の内容と言えば、
聞く・読む・書く・話すの4技能の基礎の習得から、
4技能の総合的な指導に中心が移ったことから、

各教科書会社も
output をメインとした教科書を構成し、
さらには小学校の外国語活動、高校英語への連結も配慮を余儀なく
されているようです。
そのため、一時期薄かった教科書も厚くなっているようです。

実際に三省堂の3年生の教科書(New Crown 3)を見てみると
Lesson の構成は
① GET(基礎的な文法内容を含む会話文のパート)
② USE-Read(① GET で学んだ表現を使って「読む」力に焦点を置いたパート)
③ USE-Write(① GET で学んだ表現を使って「書く」力に焦点を置いたパート)
④ 文法のまとめ
⑤ Let’s Listen や Let’s Talk(「聞く」力、「話す」力に関連するコーナー)
のように盛りだくさんになっています。
この1つのレスンをどのくらいの時間で指導するのかと思って、
ネットで調べると、大体上記の内容を 10時間で終えることになっています。

まあ、
でも大抵は「教科書会社」が設定した時間で、
先生方は「年間指導計画」を作成するのですが、この「時間」でレスンを終わることは
かなり無理がある時数であることは間違いないと思います。

そこには、
中学校で計画されている様々な行事や、総合的な学習の時間での活動、部活動での大会などに対する配慮は一切されていないので、
・文科省の指定する「時間数」の確保も難しいですし
・「時間数」が確保されたとしても、しっかりと指導するには時間が足りない
という現実があるということが軽視されています。

今回は、その内の
いかに効率的に「授業時数」を活用して、指導していくのか
(はっきり言うと、「教科書の内容」をしっかりと終えるのか)についての
具体的な話をしていきます。

初任者時の失敗談から

・まずは、自分の初任者時代の失敗から
初任者時代、何もわからず中2の学級担任を持たされ、中2の学級全ての英語、
そして技術の授業も担当させられました。

どれもわからないことばかりでしたが、
英語の授業だけには、それなりに熱意を込めて指導していました。

班での活動をメインとして、
発表場面もたくさん設定して、フィードバックも大切にしながら
指導していきました。

その分、生徒も授業を楽しんでくれて、
反応も良かったのですが・・・

2学期の後半になって、
「このペースでは教科書の内容が終えられない」ことに気づき、
その後は、結局プリント中心の授業になってしまい、
生徒の目は、「死んだ魚」のようになってしまい、
授業も成立するのが難しくなってしまいました。

時間数に関係なく、指導できれば・・・・
そんなこと思っても、
現実にはそこに「教科書」があり、それに基づいた公立入試もあるわけで、
無視することはできないわけです。

結局、翌年、
私は、2学年担任から降ろされ、1年生の教科だけを教えることになるわけですが。

そうすると、
問題は、どれだけ効率的に教科書の内容を教え、生徒に英語の力をアップさせ、
しかも 140時間内で終えることができるのか、ということになります。

ここから、
自分がそのために工夫してきた例をいくつか紹介します。

年間を見通した効率的な指導のために

限定された時間内で、
効果的な指導をして、生徒の英語力をアップさせるためには、やはり

バックワードデザインが必要不可欠だと、私は考えます。

バックワードデザインとは・・・

・このブログでもすでに取り上げているのですが、
教科書の内容をそのまま素直に指導していても、なかなか指導内容の軽重をつけることができず、効率の良い学習をさせることはできません。

そこで、
自分の学年の生徒、または担当した学年の生徒の力や、
自分が生徒に「つけさせたい力」を考慮して、
①1年間でどんな力をつけさせるのかを具体的に目標化して
②その目標を達成するために、それぞれの各学期でどんなタスクを与えるか
などを考えて、
計画に落とし込むことが必要不可欠になり、
それをバックワードデザインと呼びます。

バックワードデザインの一部の例を紹介します。

1学年の1学期までに
私は、生徒に対して「英語での簡単な自己紹介を書けるようにする」という具体的な目標を建てたとします。するとその目標を1学期中に達成できるように、
下記のような段階を考えます。
①隂山・藤井先生の英語暗唱の「スピーチ」編を活用し、
「自己紹介」の部分を「隂山メソッド」でいきなり導入しました。
→「読む力」と「話す力」の土台づくり
②フォニックスの基本を、帯学習として学んでいきました。
→「聞く力」と「書く力」の土台づくり
③①の「自己紹介」のモデルをすらすら言えるように全員で練習
→「読む力」へ、「話す力」への移行
④「自己紹介」をモデルから、自分用に代えての練習
→「話す力」の基礎づくり
⑤「自己紹介」スピーチコンテストの実施
→「聞く力」と「話す力」の育成
⑥中間テストでは、単語レベルの書く力の育成
→音と文字の関係を学ぶ
→期末テストでは「自己紹介」をすべて書ける力まで
身に付けさせる

そして、このタスクが達成できるように
教科書を活用していく指導を、日々の授業でしていくことになります。

こうすることにより、
生徒は単に、「単語を覚える、意味を覚える、発音を覚える」という機械的な学習から、
「自己紹介をしっかりできるようにしよう」という有機的な目標へと変わっていきます。

それによって、
教科書では、簡単にしか扱われていない「フォニックス」を授業の最初に帯学習として
取り入れていくことになり、教科書会社が示す「指導計画」と全く違うものが必要になってきます。

効率的な学習をさせたい、というのであれば、
まずは、このバックワードデザインを考えてみることから、始まると思います。

さて、
バックワードデザインが、完成させて、いかに授業を構成していくですが、
これは自分のも含めた指導例を見ていきましょう。

①単語指導の工夫〜フォニックスの活用

・皆さんは、どのように単語の導入していますか?
[1] フラッシュカードに新出単語を書いて、一斉に発音させ覚えさせる
[2] oral introduction を活用し、教科書の内容を導入しながら、新出単語を導入する
[3] 予習ノートに、「予習」として、新出単語を書かせ、その意味も調べさせておく
どれもかなりの時間がかかりそうです。

やはり、単語力は、英語という言語の土台となるので、
上記の他に、毎時間単語テストを実施し、丁寧な指導をしている先生方も多いと思います。

確かに、
「ある程度、英文を書かせて、英語を覚えさせる」という努力も必要ですが、
それは、あまり応用が利きませんし、時間がかかります。

そこで
私が指導したのは、「フォニックス」の活用です。
現在は、どの教科書も1年次の最初に簡単なフォニックスを取り上げていますが、
それをもう少し具体的に練習し、基本を覚えるようにさせます。
私は、松香フォニックスのテキストを1学年の1学期中に終了させ、
その後は、ほとんどそのフォニックスを土台とさせた単語指導だけで終わっていました。

普段の授業でどのように使っていたのか?
というと、
教科書で初見のページを
黙読させ、簡単なQ&Aを行います。(日本語でも英語でも可)
※すでに文法事項は覚えているという設定です。
内容確認が終わったら、
読めなかった単語を、生徒にチェックさせ、
何と読むだろうか?を推測させます。(フォニックスの活用)
そして、その単語はどんな意味であるかも推測させます。(簡単な内容確認から)
→最後に、教師がそれぞれを確認し、
(答え合わせではありません。生徒から正解を引き出させます。)
フラッシュカードで全員で発音し、再認識させます。

こうすることにより、
ほぼ大部分の生徒は、新出単語を教科書の内容とともにインプットすることが
できるようです。

・フォニックスが理解できるようになれば、
ある程度の単語は、「発音」から推測して書けるようになります。
そうなると、生徒は自らその単語を覚えようとする意欲が高まるようです。

このように指導していくと、
単語の指導と、教科書内容確認が一気に終えることができ、
タスク中心の授業構成ができます。

②文法指導について

・文法指導は、
タスクに必要なものを取捨選択して指導していきます。
例えば、上記で示した英語の自己紹介であれば、
① be動詞
② 一般動詞
の現在形が出てきます。

タスクに必要な形なので、それに応じて指導し、
必要であれば(生徒の様子に応じて)、否定文や疑問文も指導することにより、
さらに、授業の内容が効果的な学びの場になると思います。

生徒が、
” I am a soccer fan.” ともし言ったら、確認として教師が
” Are you a soccer fan?” などと簡単なQAをすることも必要だと思います。

このようなタスクに必要な英語の表現は、
ペアやグループまたは、全体である程度パターン・プラクティスをする必要があります。
もちろん、独自のものを使用してもいいですが、
田尻先生の「Talk and Talk」もかなり使える補助教材です。

③教科書の扱いは?

・このようにタスク中心の指導をしていくと、
どうしても教科書の扱いが問題になってきます。

①でも簡単に述べたように、
「教科書」を読みもの教材のような扱いをして、応用力をつけさせるための補助と考えては
どうでしょうか。
重要な文型や、大切な表現などは繰り返し覚えさせる必要はありますが、
従来のような、
予習ノートを作成し、新出単語を書き出し、その意味を調べ、
一文一文の意味を授業中に書かせたりする時間があるのであれば、
それを活動の時間に割り当てた方が英語の表現を覚えることができると思います。

私の場合であれば、
→簡単なQ&Aで、内容を確認し、単語の意味を全体でフラッシュカードで確認したら、
あとは、教科書の内容を書いてある日本語のプリントを配布してしまい、必要であれば使いなさいと、指示します。
→そういう簡単な扱いをする代わりに、教科書の暗唱を課題として与えるので、
生徒はひたすら必要な表現を覚えなくてはいけないことになります。

中学生の3年間の間に、
できれば「英語の基礎的な表現の引き出し」を頭の中に作っておきたいので、
暗唱を課題としていました。
→暗唱は、それぞれのページのテストの締め切り期限を予め連絡しておいて、
その日にちまで、直接自分のところにテストを受けるように指示していました。
朝の時間、昼休み、10分休み、授業前・後、いつでも受け付けて、基本的に授業中には
暗唱テストは行いませんでした。

こうすることにより、
授業中は、あくまでも英語による活動の時間として指導していきました。

結局、このように
バックワードデザインに基づいて、
授業を「タスク中心」の指導にし、教科書をそれを補うものとして「英語の引き出し」作りに
活用していくことによって、うまく時間を使うことができたように思えます。

教科書会社の作成した
年間指導計画を基にして指導していくと、当然「教科書中心」の
「教科書を教える」授業になってしまい、
「教科書の豊富な言語材料」に溺れてしまいます。

でも、教師サイドが、自ら
「教科書」を使ってやろうじゃないか、という気持ちを持てば、
「教科書」の呪縛から放たれると思います。

もちろん、
「タスク中心」の授業は、教科書で提供されている「タスク」を活用してもいいと思います。
ただし、あくまでも「タスク」を中心とし、教科書を補助的な扱いをすることができるかが、
ポイントとなると思います。

ほとんど教科書を使わない指導も可能

・こういう指導していた教師もいました。

中学校3年間で学ぶ単語や基本文を
彼なりに体系化し、例えば
単語テスト10級から1級
基本文テスト10級から1級 のように
級別のテストを実施し、力をつけさせていました。
級別の単語や基本文は4月当初に提示しておき、
計画的に授業中にテストを実施していたようです。

文法の学習は、
教科書は使わず、自分なりのプリント等を使い、
指導し、自己表現活動をたくさん実施していました。

教科書の扱いは、
私よりも、もっと「補助的な」扱いをしていたようです。

授業の進度や、学習内容は、
その「基本文や単語」に合わせて進めていくので、
かなりの速さで「教科書で学習する文法内容や語彙」などは学んでいきます。

そうして時間をうまく活用することにより、
区切り目で大きなタスクを課していました。

3年生の2学期最後には、
総まとめとして、学級全体で英語によるディベートをしていました。

単語や熟語の先取り

・また別な教師は、
単語や熟語の学習を先取りして、学ばせる指導をしていました。

1年生の最初の時期は、
丁寧にフォニックスの指導をして、基本的な単語の読み・書きが
ある程度できるように指導しておきます。

その上で、
それぞれの学年で学ぶ単語と熟語をレスンごとにまとめたものを生徒に最初から与えておいて、それを各授業の最初の5分程度を使って、全体やペアで発音する練習をしながら、1学期が終わる頃には、1年分のすべての単語と熟語を一旦練習し終わってしまいます。

このように
単語や熟語を先取りすることにより、
その後の教科書の扱いをより充実したものができるようです。

 

このように、
何らかの部分で、
「教科書を教え込む」のではなく
「教科書を使って指導する」というスタンスを持つことにより
「授業時間が足りない」という思いから、
脱却することができるのかもしれません。

この記事が、
何らかの参考になれば、と思います。

今回はここまで。

中学校英語の基礎固め用のブログを作りました!
ブログ「5問で復習-中学校英語の基礎」

このブログは、
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