「民間テスト」のついての7回目です。
今回は、最近の動きについて見てみましょう。
民間試験の活用度合い
・文科省の発表によると、国公立大学82校での「民間試験」活用の学校数は
下記の通りです。
※同じ大学でも、学部によって対応が違うところもありますので、合計は82校
とはなりません。
(1)出願資格として活用 44校
(大学入試改革)2021年度入学者選抜に向けた各大学の検討状況の調査結果について(令和元年5月31日):文部科学省
(2)点数化して加点 33校
(3)出願資格及び点数化して加点 7校
(4)一定水準以上の成績で共通テストの「英語」を満点とみなす 3校
(5)高校が作成する証明書等の併用 8校
(6)高得点活用(共通テストの「英語」の得点と比較)1校
(7)活用するが、現時点で活用方法を明示していない 8校
(8)活用しない 4校
・この発表を受けてNHKは次のような報道をしています。
再来年から始まる「大学入学共通テスト」に導入される英語の民間試験について、国立大学のおよそ4割が、出願資格などには使うものの合否判定には使わないなど、対応にばらつきがあることが文部科学省の調査で分かりました。
英語民間試験 国立大4割が合否判定に使わず「公平性に疑問」 | NHKニュース
▶︎実は、大学の対応がこのような混乱状態になるであろうことは
すでに予測されていました。それは、NHKの報道にもありましたように、
「公平性に疑問」があるからです。
「何の公平性」かというと・・・
①検定料の負担(各試験、レベルによって違う)
②試験会場までの交通費、場合によっては宿泊費の負担
③元来「民間試験」そのものが「大学入学共通テスト」を想定した内容ではない
④異なる試験の結果を同列の「合否判定」に使うことの不均衡
→CEFERとの対応表もありますが、その「表」そのものの信頼性も?
⑤それぞれの「民間試験」は、学習指導要領の内容に配慮していない(はず)
〜などが挙げられと思います。
👉このような状況の中で、6月18日に
この英語民間試験の利用の中止を求めて、学識者のグループが約8,000筆の署名を添えて国会請願書を衆参両院に提出したのです。
「英語民間試験、中止を」
・始まりは、京都工芸繊維大学・羽藤由美教授の呼びかけ。
ここから、SNSを中心として
「2021年度(2020年度実施)の大学入学共通テストにおける英語民間試験の
利用中止を求める」国会請願署名が始まりました。
国会請願署名(6/7~6/16)にご協力ください!
私たちは,2021年度(2020年度実施)の大学入学共通テストにおいて英語の民間試験を利用することに反対し,その中止と制度の見直しを国会に求めます。
国会請願は,国民が国政に対する要望を直接国会に述べることのできる,憲法で保証された権利です。日本に住んでいれば,外国人や未成年(たとえば,小・中・高生)も請願することができます。
今国会における請願の受付は 6 月 19 日(水)まで。そのために短期決戦の署名運動になりますが,国政選挙の直前でもあり,私たちの声を国会に届ける大きなチャンスです。
出典:https://nominkaninkyotsu.com/
▶︎これをきっかけとして、
「英語民間試験」問題について、「これでいいのだろうか?」と思い始めた
人もかなりいたようです。
そして、ここにさらに衝撃的なニュースが飛び込んできます。
TOEIC 大学入学共通テスト撤退へ
大学入試センター試験に代わって2020年度に始まる大学入学共通テストの英語の民間資格検定試験を巡り、文部科学省が認定した8試験の一つのTOEICが撤退する。TOEICを実施する国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)が2日、明らかにした。共通テストの対象となる現在の高校2年生を中心に高校では新テストに向けた対策を始めているだけに受験生への影響は必至だ。
毎日新聞 7/2 配信
・なんと「民間試験」として文科省と大学入試センター試験の有識者会議の審査の結果、18年3月の時点で認定されていた TOEIC が、この「試験」からの撤退を
表明したのです。
【18年時点で認定された8つの民間試験】
・ケンブリッジ英語検定
・実用英語技能検定(英検)
・GTEC
・IELTS
・TEAP
・TEAP CBT
・TOEIC
・TOEFLiBT
▶︎文科省は、当然この8つの「民間試験」の実施団体に対して、
全都道府県での複数回の実施や、英語の4技能を評価することなどの
さまざま条件を求めていました。
それに対して、TOEICを運営する協会(IIBC)は、撤退する理由として
「受験申し込みから実施運営、結果提供に至る処理が当初の想定よりも複雑になることが判明した。責任を持って対応を進めることが困難であると判断した」ことを述べています。
紛糾する「共通テスト」のあり方
学力の3要素へのこだわり
▶︎従来の「センター試験」は知識・技能中心の評価を廃止し、特に「学力の3要素」の2項目め「思考力・判断力・表現力」を適切に評価するため、「大学入学共通テスト」で①記述式問題②英語の4技能評価を導入したという経緯があります。
・しかし、この導入は、
「共通テスト」が、全国で約50万人の受験生がいて、それが大学入試に大きな影響を与える、というものすごく単純なことを文科省が理解していなかったような対応を今、現在も繰り返しています。
記述式の採点は、1万人のアルバイト?
NHKの報道によれば、文科省は、再来年から始まる大学入学共通テストで「バイト学生」による採点を認める方針だという。
記述式の分については機械的な採点ができないので、業者に委託して採点をする予定だが、短期間で行うためには1万人の人手が必要となり、大学院生や元教員のほかに大学生バイトも採用する予定だという。
NHK News Web 2019年7月4日「共通テスト」採点にバイト学生を認める方針 疑問視の声も
▶︎このあまりにも無責任な文科省の姿勢は、どういうことなのでしょう?
「大学生」に「バイト」で「記述式」の採点?
これを、高校入試に置き換えれば(ありえませんが)
👉「高校生」に「バイト」で「記述式」の採点をさせることと
ほぼ同じ状態なのではないでしょうか。
そして、それが「合否」の大きな基準となるというのです。
またこの「記述式」の問題が「共通テスト」を導入させる大きな理由であることからしても、あまりにもひどい扱いだと言えると思います。
何のための「記述式問題」の導入なのでしょうか?
そして、それが
この「共通テスト」で実施可能なのかを、考慮したのでしょうか?
まるでそんなことを考慮せずに、
他の恣意的な理由で、「導入せざるを得なかった」かのような状況に
呆れ返ります。
英語民間試験も、様々な問題を抱えている
▶︎英語民間試験に対しても、
今まで見てきたように、あまりにも多くの問題を抱えています。
一番の大きな原因は、
文科省が、どうも「民間試験」に全てを丸投げしておいて、
なんとかなるだろうという、姿勢なのではないか、と思います。
文部科学大臣の tweet を見ても、
「まずは(民間試験を)やらないと」などと、
その「問題」の部分があることを認めながら、
「民間試験ありき」で、ひたすら暴走列車のように突進しているようにしか
見えません。
👉グローバル化を理由に、
めちゃくちゃに進んでいる「英語教育改革」。
でも、そこには「子どもたち」「受験生」視線が1つもなく、
それを実施するための段階的な準備が欠如しています。
こうやって、
日本の教育を粉々に粉砕して、今の政権はこれからの日本を担う
こどもたちをどのように育てて行くというのでしょう。
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