学校英語で英語を使えるようになるのか?⑤~与党のスローガンとOECD

それでは、どのように文科省が変わればよいのか。

はっきり言うと、換骨奪胎しなければいけません。
今までの文科省、というか
国の教育に対する意識が低い
(あるいは教育の優先順位が低い)のが現実です。

何にプライマリティを置いているのかというと、
「経済の発展」であることに間違いありません。

与党のスローガンを見てみると

ここから、少し英語から離れていくかもしれませんが、
お許しください。

ここ10年間ほどの与党になった政党のスローガンを見てみましょう。
なぜ、スローガンかというと、
スローガンは、その与党の取り組みの最優先するものを
端的に明示しているものなので、何に力点を置いているのか
分かるからです。

①2005年 「郵政民営化」(与党:自民党)
※郵政解散のため、「郵政民営化」の one issue で選挙が行われた。

②2009年 「政権交代」(与党:民主党)
※年金問題で、与党・自民党の対応に対して民主党が政権交代
を目指した。

③2012年 「まず、復興、ふるさとを、取り戻す。」(与党:自民党)
※2011年の東日本大震災からの「復興」をスローガンとした。
ー教育に関しては、「教育をとりもどす」(教育再生)を謳い、
6・3・3・4制を見直し、多様な選択を可能とする「平成の学制
大改革」を行うとしていた。

④2014年 「景気回復 この道しかない」(与党:自民党)
※日本経済の課題を克服するためのアベノミクス「3本の矢」の
政策を継続していくを宣言した。
ー教育に関しては、理念的なものはなく「無償化する」「学制を変える」
をなどの変化を公約としていた。

⑤2016年 「この道を。力強く、前へ」(与党:自民党)
※アベノミクスのエンジンをもう一度力強く回し、消費税率10%
への引き上げも行うと明言した。
ー教育に関しては、「待機児童」が社会的な問題として世論を
にぎわしたため「子育て支援」については述べられていた。

こうやって、今までのスローガンを眺めてみると
民主党が政権を執った時期を含めても
この国の政権は。「教育」にそれほど力点を置いて
ないことが分かります。

特に、第2次安倍内閣からは、
ひたすらこの道「アベノミクス」を中心に経済政策にばかり
国が注力しているのがわかります。

OECDの数値を見ると

これは数値としていても表れていて
OECDが行っている加盟国の国内総生産(GDP)に占める
「学校など教育機関への公的支出の割合」を見るとわかります。
2012年は加盟国中3.5%で32カ国中最下位(OECDの平均は4.7%)、
2013年は最下位は脱出したが、3.2%で33カ国中32位(平均4.5%)。
なお、2012年までは5年連続最下位というありさまです。

ーさらにもう少し具体的に内容を見ると
①日本では幼稚園や大学などで私費負担の割合が高く、
家計に重い負担となっている
②教員の勤務時間が平均よりも約300時間多い
③教員の給与は、OECDは増加傾向なのに、日本は
2005年から14年の間に7%減っている
などとあります。

こうやって見ていくと、
どれだけ、国が教育をないがしろにし、
さらに保護者にも、教員にも重い負担をかけさせて
いるのがわかります。

理念なき教育政策

このどこに、教育の理念が感じられるでしょうか。

どこに、どんな日本人なるべきか、という信念が
示されているでしょうか。

内田樹さんの著書の中で、
だいたいこんな内容のことが書かれていました。

ー今の首相とか、閣僚の人たちも、他の人たちも
「自分」と同じような人になってほしいと
思っているだろうか。
いやそうでは、ないはず。
「自分」だけが特別であって、他の人たちは自分より
下の人であって欲しいと思っているのです。
そうすることにより、
自分に「権力」も「財力」も手に入れることができるからです。
国が本当に「こんなおとな」になって欲しいという
ビジョンがないからです。

的を得ていると思いました。
考えてみると、
ゆとり教育が始まり、時間数が減らされ、教科書が少なり、
総合的な学習の時間等が導入された時は、
文科省に「できる人」だけ「やれればいい」
国を牽引していくような一部のエリートさえ
できればいいのだから、という考えがあったのでは
ないでしょうか。

「英語を使える日本人の育成」の計画でも
(実は全員ではなく)1割の人たちがそうなればいい、
というスタンスが見え隠れしています。

所詮、一部の優秀な人物が輩出できるシステムを
保持しようとする体制が、
ずっと変わっていないのです。

次回は、この続きを。

 

「学校英語で英語を使えるようになるのか?」は
「①」から「⑫」まであります。
時間がある方は、下記をクリックをしてどうぞお読みください。

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